各国の”外国人労働者受け入れ政策”シリーズ。今回は「韓国」です。
まず、その特徴は…?
・送出しから受け入れへのプロセスを政府が管理し、ブローカーを排除
・最大3回まで転職が可能
・韓国語が学びやすい体制を整備している
かつては日本の技能実習制度をモデルにした制度を運用していましたが、問題が多発。
新しい外国人労働者受け入れ制度をつくりスタートしています。
それでは、具体的に見ていきましょう。
「雇用許可制」
韓国の外国人労働者受け入れ制度「雇用許可制」。
送出しから受入れの流れを政府で行い、ブローカーの介在を排除。
外国人に過剰な仲介斡旋費用の負担を軽減。
また、自国民の韓国人労働者の雇用を守るため、外国人労働者の雇用期間を3年に制限し、外国人の定住化を制限していることも特徴的です。
政府が一貫して管理しているんですね。
民間業者の介入を排除しようとしているんですね。
かつては日本の技能実習制度をモデルにしていた
かつて、韓国は、日本の「外国人技能実習制度」をモデルにした「外国人産業技術研修生制度」を運用していました。
しかし、ブローカーの不正・賃金未払いなどの人権侵害の問題が多発し「現代版奴隷制度」と批判されていました。
このことから、2004年に新しい外国人労働者受け入れの制度として、「雇用許可制」をスタートしました。
もともとは日本の技能実習制度を参考にしたところから始まったんだ…。でも、日本の技能実習制度は問題点がたくさん指摘されていますものね。
一度、日本の技能実習制度と同様の制度を運用して、その課題点を改善すべく新しい受け入れ制度をスタートしている点では、外国人労働者受け入れで日本の一歩先をいっているとも言えるかもしれません。日本もこれから新たな制度を作っていくにあたって参考にすべきでしょう。
「雇用許可制」とは?
外国人雇用を希望する企業は、政府機関に雇用希望の申込みをします。
希望をした企業は誰でも受け入れが可能になるわけではありません。
まず、政府から指示され、自国民の韓国人労働者の求人募集を一定期間行わなければなりません。
そして、一定期間募集しても韓国人からの募集が無く、政府から外国人を雇用する必要性が高いと認定されてはじめて外国人雇用の許可が下ります。
政府から外国人雇用の許可を受けた後は、送出しから受入れに至る過程を政府が管理した中で外国人の受入れが進められます。
民間業者の介入は排除され、外国人労働者が入国前に仲介斡旋費用などで多額の借金を背負った状態で入国することのないように配慮された制度の中で受入れが行われます。
上記のブローカーの排除に努めた制度になっている点は、国連・国際移住機構・国際労働機関などから高い評価を受けています。
ただ、現実的には、ブローカーを介さずに雇用許可制を利用することは難しい側面も国によってはあり、非公式な費用がかかっている現状もあると指摘されています。
日本も、外国人が入国前に過剰な借金を背負って来ることが様々な問題の根本原因になっていることが指摘されていますよね。
日本の技能実習制度も、監理団体の立ち位置はどうしても受入企業側になってしまう面があり公平性に欠けるところがあります。韓国のように受け入れまでの過程を公共機関が管理することは有効かもしれませんね。
韓国語スキルの試験合格が入国要件
韓国での就労を希望する外国人は、韓国語の試験に合格しなければなりません。
入国前に基本的な韓国語能力を測る試験に合格した者だけが、「雇用許可制」を通じて韓国に入国し就労することができます。
日本の特定技能も日本語の試験合格が要件になっていますよね。
一方で、技能実習制度の場合は、試験合格ではなく、所定の期間学習することが要件になっています。そのためか、実習生のコミュニケーション能力不足は課題になっていますね。
雇用期間は3年間に制限
自国民の韓国人労働者の雇用を守るため、外国人労働者の雇用期間は3年間に制限されています。
企業が継続雇用を希望したら1年10カ月まで雇用延長が許可されます。
転職が3回まで可能
最初に働き始めた一つの事業所で勤務を続けることが原則ではありますが、暴行などの人権侵害や賃金不払いなどの不正があると認められたら3年以内に最大3回まで職場の移動が許容されています。
実質的には転職するにはハードルが大きく、この点は日本と同様に問題視されている面もあるようです。
韓国社会に適合できるよう教育を強化
受け入れ後、外国人が韓国社会に適合できるように、韓国語や韓国社会・文化の理解についての教育の取り組みを政府が行っています。
韓国語を学習しやすい環境を整備
外国人が、勤務時間外に無料で韓国語を学べる機会を増やし、政府が国家予算で、外国人が韓国語を学びやすい体制を整えています。
国家が率先して語学の学習をサポートすることは良いことですね。
外国人労働者は毎日の仕事が忙しく、稼いだお金もほとんど母国に仕送りしなければならないため、語学の学習をしたくても困難な状況です。韓国のように、学習しやすい環境を整えてあげるのは素晴らしい取り組みですね。
韓国語教師は専門性が高い仕事とされている
韓国語教師は、韓国語教育の質の高さを確保するため、韓国語教育の公的な資格取得が求められます。
1級から3級までありますが、3級でもかなり難易度が高いです。
韓国語教育は、専門性が非常に高い仕事とされており、韓国の高学歴女性の雇用の受け皿にもなっています。
日本とは大違いですね…。
日本では、日本語教育の質の高さは、実質的に教える側の善意に委ねられているような気がします。また、日本語教師もそれだけで生活していくには経済的に厳しい職業ですね。
高レベルの試験に合格すれば永住権を優遇
外国人は、高い水準の韓国語能力試験に合格すれば、その後に永住権や帰化申請をした時に加点されます。
「雇用許可制」の適用範囲
業種
「雇用許可制」(一般雇用許可制)が適用される業種は、製造業・農畜産業・漁業・建設業・サービス業(産業廃棄物処理など)の5業種。
対象国
対象国は、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム、モンゴル、ウズベキスタン、カンボジア、パキスタン、中国、バングラデシュ、キルギス、ネパール、ミャンマー、スリランカ、東ティモール、ラオスです。
雇用許可制で働く外国人労働者数と国籍
2020年末時点で、雇用許可制で就労する外国人労働者数は、23万人。
国籍は、多い順にカンボジア(3.3万人)、ネパール(3.1万人)、ベトナム(3.1万人)、インドネシア(2.4万人)、フィリピン(2.1万人)でそれぞれ全体の10-15%程度を占めています。
カンボジア人が多いのが特徴的ですね。
韓国も日本と同様に外国人労働者はかなり多くなっていますね。