ベトナム|現地の労働法・就労文化・働き方の特徴と要点を解説

ベトナム現地の就労文化

いまや、ベトナム人の就労者は日本で第二位の多さになりました。

第一位は中国で、37万人。(平成29年10月末時点)

そして、第二位はベトナムで、24万人。(平成29年10月末時点)

技能実習生ではベトナム国籍の実習生は10万人いて、第一位になるほどです。

▷引用:厚生労働省:外国人雇用状況の届出状況(平成29年10月末現在)https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000391311.pdf

今回は、そんなベトナムの現地の労働法や働き方の文化をみていきましょう。

どうしてこれを知る必要があるのか?

それは、ベトナム人の現地の労働法や働き方の文化を知ることにより、彼ら彼女たちが日本に来てどのような点に母国ベトナムと日本の就労文化の違いを感じているのか、を知ることにつながるからです。

彼ら彼女たちの立場にたった視点により一層立つことができ、ベトナム人と日本人のより良い協働社会をつくることの新たな一歩になると思います。

それでは、ベトナムの就労文化の特徴を見ていきましょう。

かつては中国人が最多でしたが、外国人就労者についてはベトナム人がメインになっていますね。

目次

副業するのが当たり前な文化

企業は副業を禁止してはならない労働法

最近やっと日本もそのあたりは柔軟になってきましたが、まだまだ副業禁止を就業規則においている企業も多い状況です。

一方、ベトナムでは、「副業を行うこと」は「労働者の権利」として正式に認められているのです。

逆に、現地では、企業が労働者に対して副業を禁止すると、労働法の違反になってしまうことになります。

よって、ベトナム人は、どこかの企業で働きながら、別の企業で仕事をしたりすることは極めて普通なことであり、当たり前のことなのです。

副業を禁止している日本の就労文化には違和感を抱くベトナム人も少なくないと思います。

ベトナムは副業が当たり前の文化!日本はまだまだ副業に否定的な企業が多いですよね。

日本で実習生等が副業を行ったら不法就労に

最近は日本でもベトナム人の人口が多くなってきたことで、ベトナム料理屋も非常に多くなってきました。

もしかしたら、技能実習生などのベトナム人就労者で、休みの日に、知人の紹介やいつも行って馴染みのあるベトナム料理屋で、休日にアルバイトを行おうとする者もでてくるかもしれません。

そこには、注意が必要です。

会社が副業を認めているか否か、という問題よりも、例えば技能実習生の場合、特定の企業で特定の業務を行うことで限定的な活動を入管から許可をもらっているわけです。

例えば、A会社の建設業務をやるということで在留資格の許可を得ている技能実習生が、ベトナム料理店Bでウェイターをやることは、許可外の活動を行っていることになり、「不法就労」となり違法行為になります

▷引用:出入国在留管理局:不法就労防止にご協力ください
https://www.moj.go.jp/isa/content/001331800.pdf

企業担当者は外国人職員に注意が必要

非常に深刻な事態になってしまいますので、ベトナム人に限らずですが、外国人職員を雇用されている企業は日頃口酸っぱく注意しておかなければなりません。

ベトナムは副業をやるのが当たり前な文化であることで、上記の点は特に注意しておかなければなりません。

転職率が高い

日本はまだ転職に封建的なところがあるが

昨今、日本はやっと転職など、働く企業を変えることについて柔軟な考え方になり始めていますが、まだまだ封建的です。

転職回数がいくつかあるだけで、まるで犯罪者を見るかのように問題がある人と扱うことも多々あります。

会社を辞めることに対しても、なかなか一度入ったら辞めづらい文化・考え方であります。

ベトナムでは転職率が高い

それに対するかたちで、ベトナムでは、転職率が高いです。

両親や親戚も扶養するのが一般的だから

なぜなら、ベトナムでは、妻子以外に両親や親戚も扶養することが一般的で、会社で働く人にとっては、大所帯・大人数の家庭を食わしていかなければなりません

したがって、給与の金額については非常にシビアに見る傾向があります。

他に給与が高い会社の情報があったら、あっさりすぐに転職していく傾向があります。

日本にやってきて働いているベトナム人の背景を奥深く知ってイメージして指導することが必要ですね。

日本の”当たり前”と異なることに要留意

日本の価値観でいえばドライと評されるかもしれませんが、ベトナムと日本の”当たり前”は異なるということです。

国それぞれの”当たり前”は異なる。その外国人職員の国の”当たり前”を知ることで、その職員が定着して働いてもらうためにより良い施策を講じることができます。

それに、その”当たり前”の違いから起こる様々なリスクを軽減することができるわけです。

企業も労働者も有期契約を望む傾向

日本のような終身雇用という概念が無い

雇用形態のパターンは、主に「12ヶ月未満の雇用」「12ヶ月以上36ヶ月以内の雇用」「無期雇用」があります。


ベトナム現地の雇用形態・主なパターン

・12ヶ月未満の雇用

・12ヶ月以上36ヶ月以内の雇用

・無期雇用

有期雇用契約の場合は、更新は2回までとなっています。

そもそも、上記に無期雇用というパターンを一応挙げましたが、ベトナムの就労文化的には日本のような「終身雇用」という概念が無いのです。

日本は、一度ある会社に入社したら、その会社で生涯定年まで働くのが美徳という概念が、いまだに下意識に根深くあるように感じます。

数年で辞めていくのは何たることかと、批判的な思いになる人も少なくないように感じますが。

やはり、それは日本独特な、特殊な、封建的な価値観であると思います。

それは、世界的な視野で、各国と相対的に眺めて、心得て、外国人職員と向き合うのが肝要だと思います。

日本の”当たり前”は特殊であることを認識する意義

日本で普通に持っている「これはこうあるべきだろう」という考え、概念が、世界的な視野で見ると、かなり特殊な封建的な価値観という風に心得ておく必要があります。

普段持っている考えがただただ当たり前だと思って外国人職員に指導するのと、日本の価値観は特殊なんだと客観的な視野を持って指導するのとでは、指導の質も異なってきますし、外国人職員の心に響く度合いも異なってくるでしょう。

当サイトで、このように主要な送出し国の就労文化や労働法を知ることの意義は、上記にあります。

日本の特殊性を知り、日頃当たり前に思っていることが一歩海を越えれば当たり前ではないことを知り、そして外国人職員の”当たり前”を知ることで、外国人職員と共に協力して働き現場を支える「協働社会」をより良いものにしていく「気づき」になればと思い、当サイトで発信させていただいております。

これからは外国人職員の転職が当たり前になっていく

技能実習制度は、元々の在留期間は3年間から始まりました。

それが、技能実習3号が新設し、優良な実習実施機関であり優良な監理団体であったり一定の要件が満たされれば在留期間を3年間から5年間に延長することが可能になりました。

そして、近年、特定技能が新設し、技能実習3号が修了し5年間の満期を迎えようとする外国人職員が、さらに最長5年間付与されて在留できるようになりました。

特定技能2号の対象職種も、今後さらに拡大される動きであるともされており、外国人職員の在留期間はますます長くなっていく見込みです。

このような流れの上において、受け入れ企業は、一度雇用して仕事を覚えて活躍する外国人職員がずっと長く働いて欲しい、いや、一度入社したからにはずっと長く働いてくれるものだと強く期待する企業が多いことでしょう。

しかし、上記で述べたように日本の価値観と外国の価値観は異なるのです。

一度入社したからにはずっと長く働くものだ、数年で退職するなんてとんでもない、という日本の価値観は、世界からみたら特殊

例えば、今回取り上げているベトナム人の働き方の価値観では”終身雇用”という概念が無いのです。

根底にそういった価値観を持っている、というのを忘れないでいただきたいと思います。

厳密にいえば、技能実習1〜2号の3年間修了時、特に3号の2年間修了時から特定技能1号に切り替わる際などは、外国人職員は職場の変更をすることが可能です。

現実的には、例えば、技能実習生などは、実習実施機関と監理団体に挟まれ、固定的な環境から自らアクションを起こして職場を変えることは莫大なパワーや実質的なリスクもあり、とりあえず元々の職場で働き続けるということで、働き続けている実習生が多いことでしょう。

でも、特定技能制度も開始されて数年が経ち、外国人職員の中でも特定技能制度の理解が進んでいっているようで、技能実習2号や3号の修了時に他の監理団体や登録支援機関などの特定技能ビザの就職サポートを行う企業などの相談し転職を希望する動きも結構増えていると聞きます。

そういった先人の動きのノウハウは、SNSなどネットワークやコミュニティーですぐに瞬く間に広く深く共有されていきます

さらに元々は、母国現地の就労文化の価値観として、会社では有期雇用で働くのが当たり前という価値観を持っている外国人職員

これから外国人職員が転職するのは当たり前という風潮になっていくと思います

何がいいたいのかというと、そのような流れを踏まえて、もっと外国人職員の立場に立って、彼ら彼女たちが持っている価値観や当たり前を理解して、より良い働きやすい環境を考えていくことが必要である、ということなのです。

そのように考え、少しずつでもいい、小さなことから、外国人職員への接し方や、指導の仕方、環境を変えたりすることが、外国人職員の定着につながっていきます

身近にいる実習生などに対する接し方を少し変えてみるだけでもより良い方向に着実に近づいていきます。

休憩時間は労働時間にカウントされる

ベトナムの法定労働時間

それでは、労働時間についてみていきましょう。

1日の法定労働時間は、8時間とされています。

1週間の法定労働時間は、48時間とされていますが、国は週40時間労働を推奨しています。

日本は休憩時間を労働時間から差し引くが…

休憩時間は、8時間につき途中で最低30分の休憩をとらせる義務があります。

そして、ベトナムでは、休憩時間は労働時間にカウントされます

日本では、細かく休憩時間を労働時間から差し引くこととされていますね。

日本に来たベトナム人の就労者は、きっと「休憩時間を細かく労働時間から差し引いて給料が出ないのか…、せこいな…」などと、ネガティブに捉えている者も少なくないでしょう

受け入れ企業の担当者は、上記を踏まえた上で、何かちょっと外国人職員にとって喜ばれそうなことをやってみるだけで、きっと彼ら彼女たちのモチベーションや会社への帰属意識はグッと高まるはずです。

時間外労働には労働者の同意が必要

そして、残業について。

ベトナムでは、時間外労働を雇用主が労働者に行わせるには同意が必要とされています

ベトナム就労者といえば、日本では技能実習生の国籍で最多で、技能実習生というイメージが強いですが…。

最近では、通訳などで日本企業でホワイトカラー職で就労するベトナム人も多くなってきました。

ベトナム人に限らずですが、外国人職員はそもそも、サービス残業という概念がありません。

日本人は、周りを見て、終業時間になっても残って仕事をしている日本人がいたら、帰りづらい思いを抱いたり、実際に帰る日本人を咎めるような、同調主義的な雰囲気がありますが。

ホワイトカラー職で就労する外国人職員は、終業時間になると、あっさりすぐに帰る人が多いように感じます。

元々はそれが当たり前の文化。

それを、技能実習生は、会社が残業して行う必要がある仕事がある場合は、有無を言わせず仕事をしなければならないという感じで頑張っています。

日本では、会社で社員で入ったら365日24時間仕事に身を預けるのが当たり前。残業するのが当たり前というのが価値観として多いですが…。

ベトナム人職員は価値観が違います。

特に技能実習生の場合は、それなのに頑張って夜遅くまで働いている。

それは、自身の収入につながることではありますが、文化の違い、価値観の違いの中、日本の価値観に合わせて必死に頑張っているのだ、という視点を持つことが大切でしょう。

休日について

週休2日制の会社が多い

次は、ベトナム現地の就労文化、休日について見ていきましょう。

多くの企業では、週休2日制が採られています。

技能実習生は、週休1日制で働いているのがほとんど。

ベトナム実習生の母国では週休2日制が一般的な中、日本で週休1日で頑張っていることに留意しましょう。

有給休暇について

有給休暇は、12ヶ月勤務したら12日の有給休暇が付与されます。

5年ごとに1日ずつ増加されていきます。

有給休暇が残ったら買取か繰越しする文化

ベトナムは、有給休暇が残ったら、企業が買い取るか、翌年に繰り越しされる文化であります

退職するときに、有給休暇が残っていた場合、その分を賃金として受け取ることが可能です。

買い取るときは、日額100%で買い取りされます

実習生は、お金を稼ぐために日本にわざわざやって来て必死に働いています。

一円でも多くのお金を稼ぎたいと思っているわけです。

できれば有給休暇も使わずにお金でもらいたいと思っている実習生も少なくないかもしれません。

企業として、実習生が上記のような就労文化面での”当たり前”を持っていることを踏まえて、一方で、日本の労働法規をしっかり守りながら、対応を考える必要があります。

有給休暇の期間制限がない

そして、有給休暇の期間制限はありません

日本は有給休暇の期間制限がありますね。

ベトナム実習生は、母国のように有給休暇の期間制限が無いと思っている者も少なくないかもしれません。

しっかり、日本の労働法との違いを認識してもらっておく必要があります。

祝日も賃金が全額支払われる

祝日について、見ていきましょう。

国民の祝日は、10日あります。


ベトナムの国民の主な祝日

① 陽暦の正月(1月1日)    1日

② 陰暦の正月(Tết テト)   5日間

③ 戦勝記念日(4月30日)   1日

④ 国際労働日(5月1日)    1日

⑤ 建国記念日(9月2日)    1日

⑥ フン王忌日(陰暦3月10日) 1日

ベトナムでは、このような祝日では、賃金が全額支払われます

日本では、休んでいるから賃金が支払われないということになっています。

ベトナム人就労者で、日本では祝日は賃金がでないことにネガティブな感情を持っている者も多いことでしょう。

個人的な事情の休暇も賃金が支払われる

個人的な事情が起こったときに付与される休暇は、結婚、子供の結婚、親族が亡くなったとき、です。

このように個人的な事情で特別に会社からもらった休暇も、賃金は、全額支払われます。


個人的な事情の休暇

・結婚 3日

・子供の結婚 1日

・親族の死亡 3日

日本は働いていない日・時間は給料を出さない文化

日本は、休憩時間も、休日も、働いていない時間は絶対に給料を出さないという文化。

にもかかわらず、一度会社に入ったら生涯長く働くのが当たり前という文化。

一言でいえば、他国と相対的に眺めると、企業本位の就労文化でもあるといえます。

ベトナム人就労者の目にはどのように写っているのでしょうか。

その他、福利厚生など

労働者の保険加入について

労働者の保険については、社会保険・健康保険・失業保険が公的保険であり、これらは強制加入とされています。

女性の労働者には産婦人科健診を受診させる義務

年一回、定期健康診断の実施が義務です。

女性の労働者には、上記の定期健康診断に加えて、産婦人科の検診を受けさせることも義務であるとされています。

定年について

定年は、男性の労働者は60歳、女性は55歳です。


ベトナム現地の就労文化:労働者の定年

・男性:60歳

・女性:55歳

高齢者の6割以上が年金を受給せず、家族に依存

年金についてです。

ベトナム人の高齢者の約60%以上は、年金を受給していません

したがって、老後は、家族に依存するか、自身が仕事を続けていかなければなりません。

上段でも述べましたが、日本にやってきて働いているベトナム人労働者の多くは、配偶者・子供以外にも親や親戚を養っています

特定技能制度が新設され、技能実習を修了して特定技能に切り替えるとき、都市部の給料が高い企業に希望が集中する傾向がありますが、ベトナム人の文化的背景から見たとき、それは当然の傾向であると考えざるを得ません。

ベトナム現地の就労文化

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