日本で働く外国人労働者の母国の”働き方”を知ろうシリーズ。
今回は、フィリピン現地の”働き方”を見ていきたいと思います。
日本で働く外国人労働者の国籍別人数をみても、フィリピン人の割合は上位にきます。
平成29年度のデータでは、総数として14万人もの方達が働いています。
一見非常に多そうなブラジル人の人数が11万人なので、フィリピン人もどれだけ多い人数の方達が日本で働いているかイメージしやすいでしょう。
国民の10人に1人が海外へ出稼ぎ労働にいっている国でもあります。
それでは、いってみましょう。
フィリピン現地の働き方
家族を大切にする文化
フィリピンは、家族との時間を何よりも大切にする文化です。
ですので、仕事を選ぶときも、家族との時間を優先できる職場環境であるか?家族がより良い暮らしができる給与条件であるか?が、重要な要素になってきます。
仕事よりも、その時に所属している企業よりも、家族が優先順位の最上位に明確に来る文化なのです。
残業はしない
家族との時間を大切にする文化であるからこそ、残業はしないのが当たり前です。
定時になったらパッと退勤します。
日本のように「残業することが”美徳”」という文化ではありません。
もちろん、日本のように「サービス残業」などという概念はありません。
日本のような残業を美徳する文化は、世界的な基準からすると、結構変わった文化ともいえます。
逆に、フィリピンに限らず他国の就労文化を眺めてみると、残業せずに定時に帰ることの方がグローバルスタンダードだったりします。
日本では、定時にパッと退勤すると「早く帰るなあ…」という雰囲気を醸し出される場合が多いですが、フィリピンだと、家族の時間を何よりも大切にする文化という価値観が共通にあるので、定時に帰ることに何も違和感は無く、極めて普通な光景であります。
日本の就労文化は異質であることをちゃんと認識した上で、フィリピン人職員の価値観を眺めることが肝要です。
会社への忠誠心は低い
日本のように、その時に所属している会社に対する忠誠心は低いです。
あくまで「家族」が明確に最上位に来ます。
契約内容以外の業務はしない
フィリピン人は、雇用契約書で合意した業務内容以外のことはしません。
上記の業務内容以外のことを依頼すると「契約内容に入っていないからやらない」と、ドライに断るのが当たり前です。
日本人は、一度所属した会社では、何でもやるのが当たり前。元々の業務内容とはかけ離れた人事異動などでも受け入れるのが当たり前の文化です。全てを投げ打って従属するのが当たり前の日本の就労文化とは大きく異なります。
これも、日本の就労文化がかなり変わっている点でもあります。グローバルスタンダードからすると、フィリピン人の就労文化の方が世界的には当たり前に近いです。
転職するのが当たり前
フィリピン人は家族が何より大切な文化ですので、家族がより良い暮らしができる給与条件の会社が他にあれば、あっさりと転職していきます。
他社で、現在の会社より高い給与条件の求人があれば、より良いポジションの求人があれば、あっさり転職する文化です。
日本人からするとドライなクールなところがあります。
頻繁に転職をする文化なのです。
例えば、10人が同じ時期に或る会社に入社したとすると、2年後には9人の同期の社員がいなくなっており、1人しか残っていないのが普通、ともいわれています。
社会全体が転職に対してオープンな文化
フィリピンのビジネス社会でも、転職に対して極めてオープンです。
求職応募してきた人物が、転職回数が多いからといって、決して不利になることはありません。
フィリピン現地の労働法
労働者保護に重点が置かれている
フィリピンでは、労働者の保護に重点を置かれた手厚い法律制度が敷かれているのが特徴です。
労働時間や休暇などについてみていきましょう。
労働時間
フィリピンの就労文化の労働時間をみていきます。
拘束時間は9時間、実働時間は8時間、1時間の休憩を与えるのが一般的です。これは日本と同様ですね。
休憩
昼休憩1時間以外に、5〜15分ほどの小休憩を入れる文化があります。
こちらの小休憩は、労働時間にカウントされます。
肩の力を抜いてリラックスしながら仕事をすることを大切にする労働文化です。
休日
休日は、7日に1日は必ず休日を与えなければならない義務が会社に課されています。
フィリピン人は、日曜日に礼拝に行く文化がメジャーですから、日曜日は休日に設定している会社が多いです。
有給休暇
有給休暇は、1年以上勤務したら5日が付与されます。
有給休暇は、全て消化する文化です。
日本は、有給休暇を使おうとするのに色々気遣いが多く、なかなか取りづらい文化ですが、フィリピンは、普通に気軽に取れる風土があります。
ちなみに、日本は、世界の主要国の中で、有給休暇の取得率が最も低いレベルの国です。
祝日と割増賃金
祝日は、18日あります。
例えば、元旦(1月1日)、労働者の日(5月1日)、独立記念日(6月12日)などがあります。
祝日は、2種類に分類されています。
レギュラーホリデイ、スペシャルノンワーキングデイ、に分類されます。
祝日に勤務したら、通常より割増の賃金が支払われるわけですが、上記の種類により割増になる賃金の内容が異なります。
レギュラーホリデイに勤務したら、なんと通常の2倍の賃金が支払われます。
また、スペシャルノンワーキングデイに勤務したら、通常の30%増しの賃金が支払われるのです。
給料支給日
給料日は、なんと、月に2回あります。
2週間に1回の給料支給日が設定されています。
月の15日と30日を支給日と設定している会社が多いです。
貯金をしない文化
なぜ、月に2回も給料支給日があるのかというと…?
フィリピン人は、貯金をしない文化だからです。
給料日になると、ありったけのお金を使おうとします。
所持金は大体1ヶ月分の給料分くらいしかありません。
それが普通な文化だからこその、月2回の給料支給日が当たり前の文化なのです。
賞与
ボーナスは、12月に支給することが、法律で定められています。
日本は、それぞれの会社の裁量に任せられていますね。
ボーナスが無いという会社も結構あります。
それに対して、フィリピンでは、法律でボーナスを支払うことが定められています。
フィリピンの場合は、日本でいう「ボーナス」は、「13ヶ月目手当て」と呼ばれています。
その年、1年の間で、1ヶ月以上勤務している社員に対して支払います。
大体、1ヶ月分の金額が多いです。
12月24日以前に支払われるのが通常です。
解雇
先述のように、フィリピンの労働法制は労働者保護に重点が置かれた設定になっています。
ですので、企業が従業員を解雇するときも、厳格な要件が必要とされています。
ただただ一方的な解雇というのは認められません。
たとえば、従業員をリストラしようとするときも、明確な原因と手厚い解雇手当ての支払いが法的義務として企業に課されています。
退職金
退職金は、5年以上勤務したら、退職する時に、退職金を請求できることになっています。
フィリピン現地の職場
オンとオフの境目が無い
フィリピン人の働き方は、仕事中に何か食べたり飲んだり、お喋りしながら仕事する光景がよくみられます。それが普通です。
日本人からすると、オンとオフの境目がない、それが当たり前の文化です。
遅刻は当たり前
フィリピン人は、仕事に遅刻をしていまうことが非常に多いです。
もはや、当たり前とされています。
なぜなら、フィリピンの街は交通渋滞が非常にひどいからです。
また、電車やバスなども、時刻表どおりに来ないのが当たり前です。
ですので、10分程度の遅刻はしょうがないという風潮です。
そのくらい遅れて出社しても、何も注目することなく、普通な光景であります。
日本ですと「遅れる可能性があるなら、30分も1時間も早く家を出て、とにかく始業時刻までに来い」という文化ですが、フィリピンは、そんな日本のようにガチガチ堅苦しくはしていないということなのです。
時間や期日にルーズ
フィリピン人は、日本のように「仕事の時間はきっちり守る」という概念がありません。
そのような概念が無いからこそ、フィリピンの電車やバスは時刻表どおりに来ないのです。
ですから、仕事上でも、上記のような出勤時刻はもちろん、締め切り期日などは遅れるのが当たり前です。
たとえば、日本の会社でフィリピン人職員がいる場合「~月~日までに提出してください」といっても、遅れるのが当たり前な文化ですから、その文化を理解して踏まえた上で対応することが必要です。
争いごとを好まない
フィリピン人は、会社や仕事場において、人前で争いをすることを好まない文化でもあります。
たとえば、仕事上、何かフィリピン人職員に注意をすることがあっても、決して荒々しく感情的な感じで怒ることはやめましょう。
事務的な指示のように伝えることが肝要であります。
仕事で活躍している人の多くが女性
フィリピンは、離婚制度がありません。
男性は、子供ができても、逃げてしまったりして、女性がシングルマザーで子供を育てていくことを余儀無くされるケースも非常に多いです。
それもあって、フィリピン人の女性は、強くたくましくバリバリと仕事をして稼いでいくという風潮があります。
フィリピンは、女性で管理職についている人数の割合が、なんと47%もあります。
フィリピンのビジネス社会における管理職の半分が、女性ということになります。
女性で仕事デキる人が多い社会なのです。