外国人技能実習機構が令和3年度の業務統計を公表しました。
実習生の受け入れ企業に対し実地検査を実施した結果、「技能実習法」違反の項目で特に多かった事項が列挙されています。
・認定を受けた実習実施計画と実際の内容が異なっている
・各種届出(特に細かい変更点など)を怠っている
・実習生の宿舎の設備に不備がある(いま一度ルールを要確認!)
この回では、これらを具体的にチェックしていきましょう。
実習生の受け入れ企業の皆様は、ここで挙げられた項目がちゃんと適切にできているかどうか、改めて確認しましょう。
外国人技能実習機構が業務統計(令和3年度)を公表
技能実習生受入れ企業が「技能実習法」違反で機構から指摘を受けた主な内容。
機構が実習生受入れ企業に実地検査を実施
受入れ企業に実地検査を行い、法違反で一番多かったのは…?
「実習実施計画と実際の実習内容等が相違している」でした。
「技能実習法」違反で多かった事項
実習実施計画と実習内容が相違:29%
機構が受入れ企業に実施した実地検査の結果、最も多かったのは、
認定を受けた実習実施計画と実際行われている状況が異なっていることでした。
多くの受入れ企業は実習実施計画のことがよく分からないことが多いです。
監理団体に任せて、よく内容を把握していない企業も多いのではないでしょうか。
いま一度改めて「実習実施計画」の内容を確認しましょう。
そして、実際に現在行っている内容と異なっている点がないかチェックしましょう。
時の経過と共に状況が変わることもあり得ることです。
実習実施計画と異なる点が出てきたら、どんな細かい点でも機構に届出をしなければなりません。
もし、計画との相違があって機構に指摘されたら、いちばんダメージを受けてしまうのは何より受入れ企業自身です。
監理団体は、受入れ企業が行っている事業の業種の現場知識は詳しくありません。
監理団体は、技能実習制度についてはプロだと思いますが、受入れ企業の事業の業種の専門性については素人に近い団体が多いです。
「実習実施計画」の記載内容には積極的に関与すべきです。
届出・報告等が不適切:19%
実習生を受け入れている企業は、定期的に、また、何か変更があった時にはきめ細かく外国人技能実習機構や出入国在留管理局へ届出・報告をしなければなりません。
定期的に監理団体の職員が受け入れ企業に記載や署名捺印を求める書類がそれ関連です。
届出・報告書類の不備で一番指摘されるのは受け入れ企業です。
日々業務で忙しいでしょうが、こういった届出・報告のための書類には積極的に協力して関与していきましょう。
逆に受け入れ企業の方が、監理団体が自分たちの企業の届出・報告をしっかり正しく行っているのか、念を入れて確認していくくらいの姿勢が大切です。
こういった届出・報告等が不適切だったケースでよくあったケースが、下記です。
- 「機微変更届」を適正に提出していない
- 「実習実施届」を適正に提出していない
- 「技能実習実施状況報告」を適正に提出していない
どんなささいなことでも体制や業務上の事項で変更があったら、届出が必要かどうか確認して、届出義務をしっかり果たすようにしましょう。
宿泊施設等の不備:16%
技能実習生が寝泊まりしている宿舎には法定の設備を備えていなければならないことになっています。
ちゃんと設備を備えていますか?
特に「宿泊施設等の不備」で不備が多かった設備は下記です。
- 私有物収納設備の不備
- 消化設備の不備
令和2年に外国人技能実習機構から改めて「私有物収納設備」を備えることの周知の通知文が発せられました。
外外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第9条第
9号(同法施行規則第 14 条第1号)で定める「適切な宿泊施設」の要件として、技能実習制度運用要領において「個人別の私有物収納設備(以下「収納設備」という。)」を設ける措置を講じていることとされています。
この収納設備について、技能実習生の多くが、実習実施者又は監理団体が提供
した複数の者が出入りする居室で生活している実態を踏まえれば、プライバシ
ーの確保や盗難防止の観点から、身の回り品を収納できる一定の容量がありか
つ施錠可能・持出不能なもの(個人別に施錠可能な部屋である場合を除く。)であることが必要です。
外国人技能実習機構が行う実地検査において、この措置が取られていない事
例が散見されていますので、監査の際には特に注意して確認いただくとともに、
傘下実習実施者に対しても周知していただきますようお願いします。
外国人技能実習機構:https://www.otit.go.jp/files/user/200318-1.pdf
要は、カギをかけられるタンスを備える必要がある、ということです。
実習生も3年〜5年、もしくは、もしかすると今後「特定技能」ビザ等に切り替えることも踏まえれば、長期間日本で生活することになるわけです。
衣類もそうですが、銀行通帳等の貴重品もあります。
それらが容易に他人に持ち出されないような設備を整えましょう。
その他多かった違反
その他に多かった「技能実習法」違反事項は、下記です。
- 報酬等の支払いが不適切:13%
- 実習実施体制等の不備:10%
- 帳簿書類の作成・備付けの不備:8%
中でも「報酬等の支払いが不適切」では、残業代が適切に支払われてない違反が多いです。
また、事前に認定を受けた計画通りの報酬が支払われていない違反も多いです。
給料から天引きしている水道光熱費や居住費などの金額が適正とは認められなかったという違反もよくあります。
いま一度、改めて現行の実施状況が適切であるか確認しましょう。